建築現場での、箔装飾の技術について。

金沢箔を建築にあしらうには、様々な方法があります。その中でも箔装飾を建築現場にて行うこともあります。これらは、仕上がりのイメージが共有しやすく、またジョイントの無い美しい施工が実現できるといった魅力があります。一方で、現場での箔の扱いは非常に難しく、職人の高い技術と経験が求められます。そうした取り組みについてご紹介します。

 

建築の様々なプロセスでの施工が可能。

箔一は、建築物を金沢箔でで様々に装飾をしてきました。金箔は、古くから寺社仏閣の建築装飾として使われてきましたが、ここにアート性を取り入れ、また建築基準法に合わせた性能を実現することで、現代建築にも使えるラグジュアリーな素材として好まれてきました。これまで多くの物件を手掛ける中で、建築の様々なプロセスにおける方法を開発してきました。扱いやすいシート状のものや、工房内でパーツごとに加工して納品するケースなど、物件に応じた様々な手法で対応をしています。

 

それぞれに環境に合わせた、建築現場での箔装飾。

中でも、もっとも難しいのが現場での箔装飾です。 極めて薄い箔は、ほんの少しの力でも破れてしまいます。また、吐息でも飛んでしまうほど繊細なものです。通常であれば、作業台をつかい、エアコンの風なども遮断したた無風状態で、一枚ずつ、細心の注意を払ってあしらっていかねばなりません。現場施工では、そういった環境を作ることが難しく、さらに垂直の壁や天井にあしらうケースもあります。繊細な手仕事を、こうした条件下においても高い水準で行えるのは、箔一の経験があるためです。

難しい環境でも、最高の輝きを実現する。

また、箔をあしらっていくのは、タイミングが極めて重要です。 美しい金沢箔の輝きは、接着の技術によって大きく変わります。接着剤を適量塗布し、その乾き具合を見極め、微妙なタイミングを見極めてあしらうことで、金箔は最大限に輝きます。そのタイミングは、材質はもとより、現場の湿度、温度などによっても変わります。条件がそれぞれ異なる現場においては、タイミングの見極めは、至難の業といえます。さらに、現場施工では、工期もタイトとなります。仕上がった内装にあしらっていくことが多いため、失敗も許されません。ですから、現場での箔施工は、経験と技術を持った職人でなければこなせないものなのです。

 

現場での箔装飾によって広がる、金沢箔の可能性。

箔一が初めての現場施工を行ったのは、今から20年近く前、東京の飲食店グループのものでした。 その際、施主様の評価が極めて高く、大変に満足を頂きました。しかし、施工をした職人にとっては、想像以上の難しさを感じたとのことでした。しかし一方で、現場での施工をこなすことで、より金沢箔を使うシーンが広げられる可能性も感じました。そのときの経験をベースにして、現場施工の最善のやり方について研究を進めることになりました。
 

職人の経験と技術によって実現する美しい仕上がり。

現場施工においては、同じ条件はありません。全てが初めての経験となります。そのため、依頼があれば条件を細かく確認をして、何度もシミュレーションを繰り返します。作業時間も細かく正確に測定し、工期に合わせて段取りを組み上げます。さらに、施工後も長く金沢箔が美しく輝き続けるために、それぞれの建築物に合わせた仕上げの手法も編み出します。万全の準備があったとしても、現場では不測の事態も起こりえます。そうしたことへの対応も含めて、職人の経験と高い技術が現場での美しい箔装飾を実現するのです。

 

様々な条件下での施工が可能に。

こうした経験を重ねることで、様々な条件における箔の施工が可能となりました。中には、標高1350mの山頂付近で、風雨にさらされながら施工を行ったこともあります(関連記事)。困難な条件をクリアするたびに、職人の技術と経験は向上していきます。これらのノウハウを得ることで、建築資材としての金沢箔の可能性もまた広がっていっているのです。