金箔と光の新しい表現への挑戦

先端技術と伝統をかけあわせた、新しい表現への挑戦

箔一では、金沢箔を用いた表現の革新を続けています。
いま新たなプロジェクトが立ち上がっています。目指すのは、先端技術と伝統技術をかけあわせた新しい表現の開発です。

今回のプロジェクトは、東京大学先端科学技術研究センターの吉本英樹特任准教授との協業で進めています。
吉本氏は、工学とデザインの2つの専門分野を持つ注目のクリエイターです。知的で論理的な手法と洗練された美意識で、伝統の金箔に新しい可能性を開こうとしています。

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金箔を通してみる、幽玄な光

今回の取り組みの大きなテーマは、金箔と光の表現の進化です。金箔にはそもそも光を通す性質があります。金は可視光線のうち赤~緑周辺の波長を反射し、青い波長は反射しません。そのため、透過してくる光は青っぽく見えます。この独特の色彩が幽玄で美しいということで、デザインにも取り入れられてきました。なかには、世界的なロングセラーとなった作品もあります。

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東京大学先端科学技術研究センターの吉本英樹特任准教授(写真:Ari Takagi)

新たなアート作品への挑戦

いま取り組んでいるのは、この光を透過する性質の進化です。金箔に極小の穴をメッシュ状にあしらうことで、その外観をまったく損ねずに、ダイレクトに光を通すことを目指しています。 この技術によって金箔をあたかもディスプレイの様に用い、文字や模様を描き出すこともできるようになります。特にパートナーを組む吉本英樹氏は、現代アートの分野で高い評価を得ていることから、全く新しい光と金箔のアート作品を創り出すことを目指しています。

この技術を確立させることで金箔の上に自由に映像を映し出すことができるようになれば、やがては公共交通機構のサイネージや店舗内装など、様々な用途へと活用の場が広がることが期待されます。
 

光りと金箔の表現に革新を

この技術は金箔の伝統の中でも大きな意味を持つと考えています。 そもそも金箔は、光とともにその表現力を広げてきました。
谷崎潤一郎は、その名著「陰影礼賛」の中で下記のように記しています。

「大きな建物の、奥の奥の部屋へ行くと、もう全く外の光りが届かなくなった暗がりの中にある金襖や金屏風が、幾間を隔てた遠い庭の明りの穂先を捉えて、ぽうっと夢のように照り返しているのを見たことはないか。その照り返しは、夕暮れの地平線のように、あたりの闇へ実に弱々しい金色の明りを投げているのであるが、私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う。」(引用:「陰影礼賛」谷崎潤一郎)
 

日本の美意識をさらに進化させる

電灯がない時代には、金屏風は灯りを増幅させる「レフ版」のような役割を果たしており、うっすら差し込んでくる光や、ろうそくの淡い光を反射させるために用いられていました。ほのかな光の中で神秘的に輝く金箔に見出されるのは、日本独特の美意識です。いま挑戦している新しい技術は、金箔と光の関係に新しい可能性を開くものです。この技術によって新しい美が生まれ、やがて金箔の伝統となっていくことを期待しています。


この取り組みについては、特別にプレゼンの機会も与えられ、地元テレビ局のニュースにも多数取り上げられました。



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